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下手な長散歩

木曽路(きそじ)

下手な長散歩

木曽路(きそじ)

プロフィール

木曽路(きそじ)

         

木曽路は、普段は異なる活動をする3人のアーティスト(鬣恒太郎、前谷開、彦坂敏昭)の集まりで、目的やそれぞれの役割は特に定まっていない。メンバーも、時に増えたり減ったりする。はじまりは、島崎藤村の歴史小説『夜明け前』の読書会だった。『夜明け前』は、藤村の父が木曽の地で、幕末維新期の変革に翻弄されながら、自らの思いを挫折していく姿が書かれていると言われている。というのも、3人のなかで、この本を読了できたのはひとりだけで、その他のメンバーは未だ読み終えることができていない。現在は、この「挫折」や「どうしようもなさ」を感じる『夜明け前』をガイドブックとしながら、活動を続けている。木曽路の基礎的な活動に、メンバー間でのやり取りから出たさまざまな口実を元に集まり歩く「下手な長散歩」がある。例えば散歩の口実には、「中山道を歩いてみたい」や「砂を拾いにいく」などがある。仮にこういった口実を頼りとし、歩きはじめたとしても、その時の散歩を一貫する目的にはならないことも多い。全員がその口実にあった目的を達成しようと協働しているのではなく、だからといって、全員が受身で参加しているという訳でもない。木曽路は、曖昧で複相的な思いと、不完全な関係とで成り立っている。おそらく、3人が共通して感じているのは、ここでの取り組みが、それぞれの制作や生きることの、大切なインフラとなり得るかもしれないというあわい可能性なのかもしれない。歩きながら、日々のことを話したり、聞いたりする味わいが、この不完全な関係性を、不完全なカタチのままに維持し続ける必要条件となり、また次に集まる際の口実を後押ししている。

鬣 恒太郎(たてがみ こうたろう)社会や宗教と美術の関係に着目し、時代において移り変わる関係性について考察、空間を制作することにより第三者に解釈を委ねる機会を創出する。近年の個展「Ba」(VOU / 棒、京都、2021年)では、複数の文化従事者との共作において、ある<特別な場>を創出することを試みた。主な展覧会に 「Dear Big brother」(京都芸術センター、京都、2016)「ALLNIGHT HAPS 人と絵のあいだ」(Haps、京都、2016)『酔いの明星』(Finch Arts、京都、2018), 「VOCA展」 (上野の森美術館、東京、2019)、「Ba/ば」(VOU/棒、京都、2021)などがある。

前谷 開(まえたに かい)1988年 愛媛県生まれ。神奈川県在住。2013年 京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)大学院 芸術研究科表現専攻修了。自身の行為を変換し、確認するための方法として主に写真を使った作品制作を行う。主な展覧会に、「転覆する体 アート、ジェンダーとメディア」(The 5th Floor、東京、2023)「類比の鏡/The Analogical Mirrors」(山中suplex、 滋賀、2020)、「六本木クロッシング2019 展:つないでみる」(森美術館、東京、2019)など。

彦坂 敏昭(ひこさか としあき)人が「砂」と絡まり合う際に立ち上がる現象と主体や認識の揺らぎを基本的なモデルとし、他者と共に「物に参加する」方法の多様で複相的なあり方を示す制作をおこなっている。2022年度ロームシアター京都リサーチプログラムリサーチャー。2015年度ポーラ美術振興財団在外研修員(イギリス、アイスランド)。近年の主な個展に、「彦坂敏昭:砂のはなし」京都市京セラ美術館ザ・トライアングル(2022)、「To Look at the Fire」大和日英基金(ロンドン / 2017)がある。その他にフランスやマレーシア、国内では兵庫県立美術館や東京都現代美術館などでグループ展に参加。